スパイク・チュンソフト『ザンキゼロ』

人類の明るい未来を照らしましょう!

概観

 晴れた日に空を見上げると、吸い込まれるかのような錯覚に陥ることがある。そこには何もないからだ。何もないからこそ、青空は美しい。つまり、終わった世界も、また同様に美しい。
 神様が世界を作るのに7日、人間が壊すのは一日。自殺したかと思ったら世界が滅んでて人類の「残機」が8しかありませんでした系ノンストップ残機サバイバルRPGが『ザンキゼロ』である。
 具体的にゲーム内容を説明すると、ダンガンロンパを思い出させる特徴的な訳ありのキャラクター八人と、謎の無人島で流れる悪趣味な「エクステンドTV」に導かれ、流れ着く廃墟島を冒険しながら、世界が終わった真相に迫る、ADV+リアルタイム3Dローグライクと言ったところか。正直言って好きな要素しかない。
 しかし、特殊な設定はこれだけではない。このゲームの最大の特徴は、「老化」システムと「エクステンド」にある。

13日の人生と、「エクステンド

 その1として、このゲームは八人の中から四人をパーティとしてダンジョンに潜ることになるのだが、様々な事情で難易度がかなり高く、よく死ぬ。8人死ねばゲームオーバー、つまり登場人物8人はまさに残機なわけだ。
 その2、なんと作中には日数で表される時間経過があり、その時間に応じて1人のキャラクターを除き、老化する。幼年期→青年期→壮年期→老年期という四段階を経過するスピードはわずか13日。もちろんその先にあるのは死である。
 その3、全滅しなければ、ゲームは続く。それが「エクステンド」である。ゲーセンの筐体を思わせる「エクステンドマシン」に登場人物たちのヘソに埋め込まれた(死なないと取れない)、「ペケ字キー」をはめ込み、スコアを消費すると、幼年期の状態で、復活する。正確にいうと復活ではなく、記憶が継続した新たなクローンが生成されているのだが。
 かなりの速度で繰り返される生と死のサイクルを、時に回し、時に回されながら、廃墟のより深くへ潜っていく。通常一回死ねば全てがリセットのローグライクにおいて、このような管理の必要があるのは、煩わしくも、面白い。それぞれの姿が用意されたキャラクターたちと流れ行く輪廻をコントロールしながら、攻略していく点が、RPGとしての特徴であり、またその極端なまでの特殊な設定がADVとしての特徴である。
 また、満腹度や尿意、ストレスなどのゲージがあり、極限状態のサバイバル感を醸し出すローグライクゲーム要素もあり、難易度が高いゲームが好きな人にオススメの作品となっている。  

8つの廃墟と、ガレージキッドの仲間たち

 世界は終わっていて、廃墟には未知の化物が生息しており、状況は分からないまま、死と苦しみを繰り返させられる。それでも、彼らはエクステンドマシンのパーツと過去の真実を求めて、流れ着く廃墟島に向かう。そこで明らかになるのは、八人の過去だ。
 詳細についてはここで語らないが、先述したエクステンドTVは七つの大罪の二つ名を科せられた登場人物たちのかなりエグい過去を晒す内容となっている。そして彼らは小学生の時、自分たちが「ガレージキッド」の仲間であってことを思い出す。その人数が「7人」であったことも。
 1人裏切り者が混じっているのは定番だが、幼少期の仲間というのがまた良い。『ザンキゼロ』でエクステンドTVが語るのは全て過去の話であり、覆ることのない、既に終わった話である。つまり、『ザンキゼロ』はその根底から後日談(エクステンド)であり、幼少の続き(エクステンド)を描く物語でもあるのだ。
 さて後日談に欠かせないのが廃墟である。『ザンキゼロ』に登場するステージ=廃墟は下記である。
・ビル(出版社)
・自然公園(ツリーハウス?)
・地下鉄街
・温泉街
・豪華客船
・学校
・病院
海上プラント研究施設
これがまた作り込まれており、かなり雰囲気がある。特に病院やら学校やらは登場するクリーチャーのキモさが凄く、また暗いことからかなりホラーテイストとなっているが、結果的にあの頃の仲間と廃墟を探索できるというのがこのゲームの魅力の八割を構成しているように思える。世界の終わりに一家言ある人におすすめである。

チラシの裏

 ネタバレ含まれてて読まなくていいやつ。というかあまりに前すぎてこれ以上書くこと忘れた。キャラクタ評とかやろうとしてた気がするけどめんどい。
 ストーリーは実は後半かなり雑。主に黒幕とラスボスの動機と行動が噛み合ってない。冷静に考えるとやってることめちゃくちゃすぎる。でもエンディングの演出がかなり良かったからまあまあ許せる。ぶっちゃけ卑怯だが、良かった。
 あとは島が動くとしてそうはならんやろ。でもゲームなんでよし。
 RPGとしては難しいを超えて理不尽。というかただ嫌がらせと初見殺しのギミックが多い。割りに短調。(そういうコンセプトとはいえ。)まず、ローグライクと同じく敵のいる座標には移動できないので、リアルタイムで移動する敵に囲まれると絶対に死ぬ。またプレイヤーの攻撃はクールタイムがあり、なおかつチャージ攻撃でなければお話にならないため、戦術としてはひたすらヒットアンドアウェイすることになる。(つまり単調かつ囲まれたら絶対に死ぬ(2回目)。)ただでさえそのような仕様なのに、暗い狭いステージが多い上、エグい敵が多い。背中を見せるとものすごい勢いで近寄ってくる影男型や、彫像に擬態するキモくて毒持ちでターゲットにとりにくい擬態型はまじで最悪である。よく囲まれて死ぬ(3回目)。また罠も即死級のものが多すぎる。フロア落下で囲まれる(そして死ぬ(4回目))などは序の口で、踏んだことに気づくのが数秒遅れると、暗がりから発射され続ける矢に皆殺しにされる。3Dのため位置把握はかなり難しく、またリアルタイムで動くため反応しなくても死ぬ。何より最悪なのはそうやってフロア移動するたびに年齢が経過もしくはリセットされ、再度攻略に適正な年齢になるまでに時間がかかることである。ぶっちゃけエクステンドするよりロードしたほうが早い。クラフト要素などやり込み要素などもあるが、正直もうやりたくない。
 キャラクターはかなりいい。全員エグい過去持ちだが、冷静に考えると本人ほとんど悪くないものばかりである(一部除く)。いかに断罪というものがバカげたものかがわかる。それもあり、ピーキーな設定の割にかなり嫌味がない。ダンガンロンパはわりと登場人物の根がクズだったりするので(余談だがダンガンロンパの本質は洗脳されてなくても普通に計画的に殺っちゃう人がいることにあると思う)、多分その辺は好感が持てた。その分過去がエグいが。ポップ要素とか皆無。生々しくてジクジク嫌な気分になるタイプのやつが多い。あとわりと下ネタとかが無視できないレベルで多い。特にゼンくんの過去とボスがまじでエグい。あれで嫌になる人かなり多いと思う。まあ全部終わってしまってもう変えられない話なんだが。
 とにかく雰囲気が良くて、それを存分に活かしてうたゲームだった。ダンガンロンパもあのエリアが解放された時の探索が好きなんだよな。ゲームとしてはストレスフルだが、まあどマゾにはおすすめ。もう少し戦いが短調じゃなかったらまだやりこみがいがあったと思う。ローグライク意識なら敵の行動もっと遅くしてくれ……。考えてる余裕がない。結局クラフト全然埋めないままエンディング見て投げた。だいたい三十時間くらいやった。もうやらないけど2が出たら多分買う。そんなゲーム。