Jamey Stegmaier 『サイズ:大鎌戦役 (SCYTHE)』②勝利条件・ゲーム目標

勝利条件・点数計算

 前回の続き。今回は点数計算周りのリソースと星章(勝利目標)について書く。

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 「サイズ」というゲームは勝利条件とゲームの終了条件が同一ではない。終了条件は「いずれかのプレイヤーが星章を6個獲得すること」だが、実際の勝敗は星章を含む複数の要素をもとに点数計算を行い、改めて決定される。具体的には、「獲得星章の数」「終了時点の支配区域の数」「保有資源の数(2個ごとに)」「建造物ボーナス」「保有資金」の5要素が加味される。また、それらによって得られる点数の倍率は、保有している民心の程度によって3段階に決定される。同点の場合を除きその他のリソースは一切勝敗に関わらない。

 そのため星を6個獲得したプレイヤーが必ずしも勝つとは限らないが、星章>区域>資源の数という価値設定がされており、なおかつゲームを終了させたプレイヤーが最後にアクションを行ったプレイヤーになるため、概ね星6個獲得したプレイヤーが有利なことは変わりない。

 ただし、民心レベルに差異が存在する場合にはその限りではない。民心レベルが1あがると、前者三つのリソースそれぞれの価値が、1上がる。例えば、星章6個で民心レベル1の場合は3*6=18点となるが、星章5個で民心レベル2の場合は4*5=20点となり、後者が優位である。そのため、民心レベルが他のプレイヤーより低く、かつ星章の差異が小さい場合は、必ずしもゲームを終わらせたプレイヤーが勝つとは限らない。支配区域でも差がつくことを考えると、民心が低い場合は最低でも星章・区域に2~3の優位がある状態で終わらせたい。

 目的カードを除き各プレイヤーは共通の目標が設定されているため、大抵の場合、星章の数で大きな差異を付けることは難しい(周りが上手くなればなるほどそうなる)。よって、プレイヤーは星章によってゲームを終わらせることとは別に、星章以外の部分に差異をつけることによって勝利を目指すべきである。これはあくまで現時点での私の考えに過ぎないが、支配区域の数と保有資金の二つの差異によって「サイズ」の勝敗は決まる。

  支配区域の数について。これが強力な理由は、「移動」というアクションの強さに直結している。プレイヤーが1アクションで増やせる支配区域の数の最大は、3区域とカウントされるファクトリー抜きで6区域である。もちろんこれは後のラウンドで取り返されることも理想の移動ができないことも考慮していない値で、現実には難しい値であるが、それでも星章の獲得の難易度を考えれば驚異的な数値である。

 支配区域の数の増やしやすさは、「ユニットの数」「移動の自由度」によって決定される。つまり、より多いユニットを盤上に配置し、極力薄く広く移動させることによって、支配区域をより多く得ることができる。

 ただし、この行為には三つのデメリットがある。一つ目、最も生み出しやすいワーカーは増やすほど「生産」のコストが上がる。二つ目、ワーカーを広げる行為は、「生産」アクションによる生産性を極度に下げる。三つ目、戦闘ユニットが広がっている状態は、他プレイヤーにとって最も攻めやすい(星章を獲得し、支配区域を奪い返しやすい)状態である。

 前者二つはようするに「生産」というアクションをしなければいいので、必要な資源を出してしまった後ならば問題ない。あと一つが問題である。よって攻められる危険性のない最終手番は、もっとも支配区域を獲得しやすい手番という点で最強の手番であり、これが星6個獲得するプレイヤーに与えられた最大の特権である。(必ずしも「移動」でゲームを終わらせられるとは限らないが)

 保有資金について。資金による点数は差がつかないようで案外差がつく。民心や移動などの不確定要素に左右されにくいため、安定して着実に点数を伸ばす上で重要である。このゲームにおける資金の獲得方法は以下の手段のいずれかによる。

・初期資金

・「移動/獲得」アクション

・下段アクション

・ファクトリーカード

・遭遇カード

・「徴兵」アクションの取得時・継続ボーナス

・プレイヤー間の交渉

 初期資金と「獲得」アクションについては基本語るだけ無駄なので割愛。下段アクションは「①概要・アクション」で述べた通り、最大値が決まっており、獲得量はどれほど効率的に下段を行なったかによって決まる。資金を生み出すファクトリカードは国家を問わず強い。特に下段が完了した後半は移動以外にやることがなくなりがちなため、選択肢にあるとないとでは大きな差がつく。当然ロングゲームにおいても強力。遭遇カードの資金獲得は意外とバカにできない。戦闘星章を2つとった後、「移動」アクションで点数を伸ばすための選択肢として有力。「徴兵」はおそらく最も差がついてしまう部分。「徴兵」が0金アクションのボードだとしても、一回だけ行って「展開」の新兵を2金に動かすのが強い。1アクションが生み出す点数量としてはかなり犯罪的(ただし必ずしも周りがメック全台出すとは限らない)。実はプレイヤー間の交渉材料として得ることもできるが、口約束を守る理由が一つもないため、個人的には使ったことがない。

 これは受け売りだが、資金を20前後まで稼ぐことができれば大体のゲームで高順位を狙える。これは消費さえ抑えればそう難しくない。案外「交易」の回数で決まっている気もする。

 余談だが、目的カードの「資金20以上保持していること」は強すぎると思う。ただ勝利を目指して下段を実行していれば達成できる上に、一度達成してしまえば好きなタイミングで表にできる。「資金n金以下で〜」みたいなカードはカス。達成したら実質負け。

 資源について。民心レベルが2以上なら、2個で2点と得点効率は悪くない。ワーカー5人の状態で「生産」を2回打てば10点獲得していることになる。にも関わらず資源勝ちを中々みないのは、「サイズ」特有の生み出した資源がプレイヤーの手元ではなく区域に置かれるという性質による。早い話が、資源を貯めれば貯めるほど奪われる危険性が高まる。よってとにかく多くの資源を出すよりは、使う分だけの資源を出して即使用し、手番を圧縮する立ち回りの方が安定する。また、生産のためにワーカーを固める動きは、支配区域による点数獲得に対してマイナスに働く。というわけで私は原則として資源を余らせないようにしている。とはいえ、奪われないような場所で生産する立ち回りも可能であるため、十分に検討可能な戦術であるとは思っている。特に「生産」相当の上段を行うファクトリカードを使い、ワーカー8人のコストを踏み倒して資源を大量入手する戦術には可能性を感じている。

 最後に建造物ボーナスについて。残念ながら「サイズ」は陣取りゲームの要素もあり、複数の狙った場所に建造物を立てるのは難しい。概ねはないよりはマシになると思われる。一応プレイヤーが少なければ少ないほど達成難易度が下がる。

 以上が「サイズ」の得点を伸ばす際に考慮している内容である。実際はゲーム終了時に他プレイヤーより1点でも勝っていればよく、最大得点よりもスピードを優先すべき局面は往々にして存在する。つまりいかに星章を取るかである。星章については次章で述べる。

星章

 「サイズ」のゲーム目標は以下の10種である。

・改良6回

・建設4回

・展開4回

・徴兵4回

・ワーカー8人

・戦闘勝利(1回目)

・戦闘勝利(2回目)

・目的達成

・戦力16

・民心18

 以上のうち6種をいずれかのプレイヤーが達成した時点でゲームは終了する。それよりも多く獲得してさらに差を広げることはできない。故にどの目標を達成するか、それをどれくらい短い手番で6個達成できるかが重要になる。

 星章の達成難易度には露骨に差がある。当然簡単なほど速い。あくまで私見にすぎず、ゲームによってある程度変わるが、ワーカー≧戦闘1回目>展開=徴兵≧建設>改良>戦闘2回目≧戦力>>民心?????目的達成あたりで捉えている。ワーカーは最速生産3回で確実に可能なこと、戦闘1回目は攻める側が有利なゲームであることを理由に高く評価している。下段アクション系は未改良の「生産」が2区域指定のため、3つ目以降難易度が上がる。戦闘2回目は、確実に勝てる戦闘のみを仕掛けると仮定した場合である。実際は他プレイヤーの戦力やユニットの配置の仕方によるため、一概に評価はしにくい。上段アクションで獲得できる値と最大値に差があるため、民心最大は戦力最大より遥かに難しい。目的カードは内容によって差がありすぎる。このゲームで一番勝敗に運が絡む部分である。

 ゲーム中盤で何をやれば良いのかわからなくなり無駄な手番を使わないよう、各ゲームで自分が獲得する星章がどれかは初めにある程度決めておいた方が良い。その際にはゲーム開始時に最も不確定な要素である、戦闘星章の獲得数について、0、1、2それぞれの場合を考えておくと良い。

 まず0個の場合。達成する6個は「ワーカー・目的・建設or改良・展開・徴兵・戦力」といった感じになる。まず下段三つの完遂に時間がかかる上に、目的カードでハズレを引いた際の代わりが下段全部完遂か、民心18というかなり苦しい状況になる。いずれにしても他の戦闘勝利を得たプレイヤーの速度に勝てるとは思えない。よって極一部の場合を除き、一回は戦闘勝利を目指すべきである。

 1個の場合。「ワーカー・目的・戦闘勝利・展開・徴兵・戦力」といった感じになると思われる。目的の達成がきつい場合、最後の一個がやや苦しいが、まだ下段4つよりは3つの方が現実的である。戦力と戦闘勝利の両立は難しいように見えて、戦力16になったのちに戦闘で有り余る戦力を使ってゲームを終わらせればよいので、見た目より難しくはない。

 2個の場合。「ワーカー・目的・戦闘勝利・戦闘勝利・展開・徴兵」といった感じになる。2回戦闘を行う分戦力最大は達成しづらくなるが、その分必要な戦力は少なくなる。戦闘勝利が移動1手番で獲得可能な星章である以上、最も速い勝利方法とも言える。また戦闘勝利はうまくやれば1回の移動で二つ獲得することが可能なため、逆転勝利にも向いている。ただし、必ずしも戦闘勝利のしやすさはゲームによって大きく変わるため、毎ゲームで2つ戦闘勝利を取れることを前提としない方が良い。下手にこだわるよりは別の星章を目指した方がが近道のこともある。

 なお以上の内容は星章のルール自体に能力が及ぶザクセン帝国には適用されない。具体的にいえば戦闘3つと戦闘4つの場合が追加される。これにより他国とは完全にかけはなれた星章獲得プランが可能となっている(勝てるとは言っていない)。

 最後に考えるべきは取得する星章の順番である。これについては明らかに「移動」もしくは「移動」の下段アクションで最後の星を取るように動くのが良い。「移動」で支配区域を一方的に増やしつつ、相手に支配区域を増やす機会を与えないからだ。上記の条件を満たすことが可能なのは、下段と遭遇による星章獲得を除いて「戦闘勝利」「目的」のどちらかである。よってこれらはできる限り後に残しておいた方が良い。

 他にも星章に関してはワーカー8人と戦力16の相性が悪いだとか、ポーラニアは民心18を達成しやすいだとかあるのだが、キリがない上体感なので割愛。

 全体として総括するとこのゲームとにかく「移動」が重要である。そしてそれを難しくする一番の要素が戦闘なのだが、これもまた複雑である。そして戦闘を語るためにはまずメックの話をしなければならない。というわけで次は多分国家の能力について書けることがあればいいと思いましたまる